毎日更新!SOU・SOU読本
本日は日曜日、数寄屋大工一家の箱入り娘&SOU・SOU傾衣の看板娘、寺田由のコーナーです!
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先週は素敵な金物屋さんとの出会いを熱く語ってしまいましたが、今回はその「金物」をご紹介いたします。
「釘(くぎ)」といえば恐らく皆さんの頭の中では同じ「丸い釘」を思い浮かべていると思います。
いわゆる一般的な釘は西洋から入ってきた「西洋釘」と言われるもので今回、私がご紹介したいのはこちらです。
「和釘(わくぎ)」と言われるもの。
大きな違いは丸ではなく四角いことや、打ち付ける部分の形状も少し違います。
機械的に量産されているようなものではなく、一本一本鉄を手で打って作られた少し不揃いな感じもまた魅力です。
丸い釘に比べて表面積が多い分、木材への食いつきが良く抜けにくいのが特徴。
頭の部分がT字になっていたり、折り曲げてあったりします。
サイズも種類も様々ですが、完全に打ち込んだりあえて少しだけ頭を出して使ったり・・・用途によって使い分けます。
この小さな米俵のようなものの中には和釘が何十本単位で入っており、昔はこのような形で販売されていたそうです。
茶室で使用する和釘は、細くて華奢な竹や土壁、柱の丸太など失敗が許されない一発勝負の打ち所が多く、床柱(床の間の柱)の釘などは打つ位置の明確な基準がないため打ち手のセンスが問われるところです。
そしてなにより、施主の大切な道具を掛けるのを一手に支えるのがこの釘となるわけです。
軽い物もあれば、重たい物もあります。
それを万が一落して破損などしては一大事です。
ですので、この釘というのが非常に大切だということがお分かりいただけるのではないかと思います。
たかが金物ですがとても大切な金物。
茶室の金物は華美な装飾はなくとも空間やしつらえを邪魔せず、ですがひと際「凛」とした佇まいが洗練された印象です。
茶室や和室に足を運ぶ機会があれば、そんな金物に注目してみるのも面白いかもしれません。
《つづく》
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それでは、また明日。
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【今日の合言葉】
「茶室彼是(ちゃしつあれこれ)」
・店舗でお会計時に、〔今日の合言葉〕を言って頂くと、1ポイント差し上げます。
(1日に1ポイントのみの進呈です)
・毎日変わりますので、ご注意ください。
・店舗のみのサービスとさせて頂きます。
あしからず御了承願います。
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本日は茶室工事から少し寄り道をして、茶室とは切り離せない「金物」をご紹介いたします。
ホームセンターに行けば果てしない数の釘やネジ、ハイテクな錠などの建築金物がありますが、茶室の金物は「和金物」と言われる少し特殊なもの。
特殊と言っても「今や特殊」なだけで元々は日本のものなので特殊というのも変ですね。
とある小さな金物店、そこは私と同世代ぐらいの若いご主人が1人で金物の商いをされています。
重要文化財の店構えからして代々金物で商いをされておられるのかと思いきや、自分で始められたとのこと。
しかも取り扱っている金物は和金物。
今では手に入らない昭和のデッドストックや江戸時代の骨董品のような金物が美しく陳列されています。
和金物は需要がないから市場には多く出回らないのかもしれません。
でもきっと探している人はいるし、探しきれず諦める人もいるはずです。
しかし、この店のご主人は「こんな金物を探している」と相談すれば次々と惜しげもなくぴったりな金物、むしろそれ以上の物を出してきてくれるのです。
その在庫や知識には驚きを隠せません。感動すら覚えます。
「有るものは有る、無いものは無いけど制作できるかも・・・」
もうどのメーカーも作らなくなった金物を制作したり、時には自分で手を加えたり、こんなものもあった方がいいと思えば開発したり。
とにかく金物への熱量は止まることなく、どれも興味深いお話ばかり。
不思議なことに、金物は昔のものの方が質が良いということ。
例えば襖(ふすま)の引手、技術も道具も進化しているはずなのに、昔作られたものの方が技術力が高く精巧に作られています。
さらにデザインも洗練されており今見ても心惹かれるものばかり。
ご主人の言葉をお借りすると
「いくら良い建具や襖紙(ふすまがみ)を使っても最後に取り付ける引手が安物では良いものにはなりません。やっぱり「格」が同じであってこその良い物なのです。金物は小さい物なので金物なんて・・・と思われがちですがそうではない。それが金物のチカラです。」
お話を伺っているうちに、なんとも言えない満たされた気持ちになり気がつけば3時間。
個人的にはとても良い商いをされていると尊敬の念を抱きましたが、その根底にはご主人の金物への愛が魅力的にさせているのだと感じました。
伝統的なものはあれもないこれもない!なんて言っていますが物も心意気も「ここに有る!」と叫びたくだなる出会いです。
和金物の話からは少し外れましたので、次回は茶室の金物のお話をしたいと思います。
《つづく》
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それでは、また明日。
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【今日の合言葉】
「茶室彼是(ちゃしつあれこれ)」
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こちらの写真をご覧ください。
少しわかりづらいかもしれませんが、主要な柱に紙が巻かれているのがお分かりいただけるかと思います。
作業場で仮組みされたのち、柱に養生の紙をまきます。
言葉の通り、仕上げた材に傷がつかないよう保護するためのものです。
今は色々と便利なものがあるので、この養生も糊付きの紙などが一般的ですがうちは昔から「ふのり」を使っています。
「ふのり」ご存知ですか?
海藻の一種で食用のものとは少し色や形状が違い、乾燥させて板状にしたもの。
これを鍋で炊いて、トロっとした糊状にして使用します。
その都度、鍋で炊いて紙を貼るのはとても手間がかかりますが、建物が完成後に紙を剥がした時に木材に影響を与えず糊の跡も残りません。
そのメリットがあるため、あえてふのりを使用しているのですが今では入手困難。
なかなか昔のように安価では手に入らず、とてもに貴重になってしまいました。
我が家では大切に大切にちょっとずつ使うふのり。
昔は祖母や母が一日中、ふのりを炊いてせっせと作業場へ持って行っていたことが思い出されます。
良い匂いではありませんが、ムンと広がる海藻の独特な匂い。あの時のふのりの匂いが今では少し懐かしくもあります。
たかが養生、されど養生。
ふのりは他にも汎用性が高く、昔から色々な用途に使用されていたよう。
詳しく気になる方はコチラもご覧になられると面白いかもしれません。
これもひとつ、昔の人の知恵ですね。
《つづく》
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それでは、また明日。
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【今日の合言葉】
「茶室彼是(ちゃしつあれこれ)」
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茶室工事が始まってからと言うもの、休みの度に作業場や現場に足を運び工事の様子を見守っていた・・・
と言えば聞こえはいいですが、何をするでもなく、ただ30分ほど作業を眺めて立ち去るというルーティン。
棟梁である父が陣頭指揮をとっていましたが、父が他の仕事で不在の際は兄が1人で黙々と作業をする現場も目にしていました。
今回はそんな兄の健闘をご紹介します。
兄が任されたのは床の間の天井。
何やら苦戦している様子は母を通して聞いてはいましたが、改めて当時の様子を尋ねてみました。
床の間の天井に用意したのは杉の板。
これを鉋(かんな)を使って削るのですが、
「薄い杉の板を鉋で削る」
どうやらこの作業に「技」が必要なようで、今ではこの技術を持つ職人さんが少ないそう。
ヤスリでは削るのは簡単だけれど、ヤスリで削ると木目がぼやける。
鉋で削ると経年変化で光沢と木目が立ってどんどん美しくなっていく、そのためには手で鉋を使って削らないといけない。
なるほど・・・
腕の見せ所というか、棟梁からも試されている大事な仕事だったのかと想像できます。
ここからは本人の口から出た言葉
「でも、薄い杉の板を削っていくとどんどんすり減っていって無くなるまでに仕上げないといけない焦りと、よりによって乾燥が進んだ特に削りにくい板。
なにより高価な板をダメにしたらとんでもないことになる!って分かってるから途中でホンマに泣きそうになったわ。」
▲削る前
▲仕上げ後
今では笑えるけれど、このプレッシャーはやった人にしかわからないものなのだと思います。
とにかく仕上がって良かった。
それにしても、床の間の天井は気にも留めないところかもしれませんが、実は職人の技が光る場所。
こんなエピソードを知るとじっくりと見たくなります。
そんな兄の足元にはひと仕事した足袋が少し誇らしげに見えました。
《つづく》
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それでは、また明日。
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昨年の4月頃から父と兄の2人で作業場で木材の加工作業を続けて8月頃に仮組み、9月にいよいよ建築現場での作業となりました。
実は材木を搬入するのも一苦労。
そして、一番の関門が基礎である柱を組み立てる作業。
父の言葉を借りると「逃げ場がないスペースにぴったりと収めないといけない」
例えて言うと、箱の中にぴったりと収まるように箱を組み立てる・・・と言ったところでしょうか。
ポイントは箱を「入れる」のではなく「組み立てる」のです。
以前ご紹介したように数奇屋建築の柱は「仕口(しくち)」という加工がされており、複雑に組んで建てるのでそれを箱の中に収めようとすると、単純に考えてもスペースに余分が必要になります。
それを限られたスペースでいかに組み入れるか。
まるで難解なクイズのようで、その仕組みを何回か父に聞いたのですが、残念ながら私には最終的に理解できませんでした。
茶室の建設予定地の建物内の限られたスペースにすっぽりと収まるような形。
単純そうに見えてそうではないのが職人の世界なんでしょうか。
一つ言えることは基礎の工事をしている現場はとにかく緊張感でピリついていて、親子と言えども余計な言葉を挟む余地はないほど。
床下の柱も天井も完成してからは目に触れる部分ではありませんが、もちろん妥協はありません。
基礎がきっちりと収まらないと全てに狂いが出てくるということもあるでしょう。
何事も基礎が大事。そしてその準備が大事になってくるのです。
《つづく》
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それでは、また明日。
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【今日の合言葉】
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何でもコンピューターと機械があればできてしまう時代。
木材を加工するために使う機械こそ文明の進化かもしれませんが、父と兄がしている仕事は基本的には何十年、何百年と変わりない仕事のように思えます。
伝統は何も特別なものではなく「今日の仕事」を毎日続けていく襷なのかもしれません。
全ての柱を丁寧に加工する、そんな気の遠くなるような作業が終われば今度は「仮組み」に取り掛かります。
その名の通り、作業場内で茶室を組み立てます。
「やらなくていいなら、手間だからやらない方がいい。だけどやるのにはきちんと理由があるんや」
ということで、その理由が気になるところ。
一番わかりやすい理由は、建物全体の微調整をすること。
全て鉄筋で機械で加工するなら寸分違わず組み立てられるかもしれませんが、木は生き物でそれを作るのは人間です。
柱の収まりや天井の収まり、全体の調整が不可欠。
そして、一番の理由は現場(建てる場所)での作業期間をを最短にするため。
例えば、マンションやビルの中であれば作業が長くなればなるほど騒音などで近隣の方に迷惑となるため、予行で一旦組み立ててしまえば随分と工期は短くなります。
逆に屋外に建てる場合には一気に組み立ててしまうことで大切な木材を風雨にさらすリスクを減らすことができます。
それもこれも、数奇屋建築には柱に番付という印があるからできることです。
実際に立体形になるとワクワクが増すのも事実ですね。
《つづく》
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それでは、また明日。
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先週ご紹介した「番付」された柱の次の工程は「加工」です。
「この建物は釘を一本も使わずに建てられています。」
テレビなどでこんな風に紹介されているのを耳にされたことのある方も多いのではないでしょうか。
日本の伝統的な工法で建てられる茶室はボルトや釘ではなく木と木を組んで建てられます。
(釘やボルトを使用しないわけではありません)
立体のパズルのような仕口(しくち)と言われる複雑な加工を柱に施して組み立てます。
全ての柱が同じ仕口かと言えばそうではありません。
柱には番付と一緒に適材適所、全て計算された仕口が書き込まれており、それに合わせて一本一本を手作業で柱を加工します。
素人の私が見る限り、柱の加工が複雑すぎてどうして組み上がるのかが想像できません。
外れそうで外れない「知恵の輪」のようで、考えれば考えるほど理解が遠のきます。
それもそのはず、簡単に理解できれば「修行」は必要ありませんね。
父の修行中は親方や兄弟子に口も聞いてもらえないような時代。
ただただ先輩たちのすることを見て真似たり、仕事が終わってから木の切れ端で納得するまで軸組を勉強し、伝統的な木造の理論や技術を身につけたそうです。
《つづく》
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それでは、また明日。
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【今日の合言葉】
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茶室工事は下準備が8割、現地で2割。
現場で行う作業よりそれ以前の準備の方がうんと時間がかかると言うことです。
やっとこさで着手したSOU・SOU茶室工事ですが、工事の進捗状況は作業場でしか確認できません。
毎日とはいきませんので、休日のたびにせっせと作業場に足を運び工事の様子を見学していました。
まず間竿(けんざお)を作ります。
一見、細長い棒に見えますが、これがとても重要な役割を果たします。
簡単に言うと建物の定規のようなもの。
建物全ての実寸法が書き込まれており、それを見れば構造、納まり、仕上がりや建具の大きさまで図面がなくてもわかるようになっています。
父曰く
「これ一本あったら、同じ茶室がいくつでも作れる」
とのこと。
素人目にはわからない、魔法の棒のようです。
さらに「墨付け(すみつけ)」と言う作業を行います。
墨付けは選んだ木材にそれぞれに合った「番付け」と言われる印をつけます。
まるでお相撲のようですがここでの番付けは、材木を組み立てていく時に必要な印のこと。
碁盤の目のように東西南北、イロハで柱に印を付けていきます。
番付けは数奇屋建築独特のもので、複雑な建物を組み上げる際に分かりやすくする役割があります。
番付を見ればどこで使われる材料なのか一目瞭然。
茶室で使われる材木はその場限りの貴重な材木が多く失敗が許されません。
墨付けを任されて一人前。
かつて父が若かりし頃、親方から墨付けを任された時には睡眠もろくにとらず必死になってやったそうです。
それほど重要な作業ということがうかがえます。
その後は番付に従い、一本一本の柱に加工をおこないます。
《つづく》
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それでは、また明日。
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社長の若林からの茶室の依頼はもちろん嬉しかったのですが、私には少しだけ不安に思っていることがありました。
それは、SOU・SOUで一緒に仕事をするスタッフの反応。
SOU・SOUのスタッフはそれぞれでお茶のお稽古に通っていますので全く馴染の無い空間ではないのですが、多様性の社会、色々な考え方があって当然だと思っていました。
茶室は極論を言えば、なくても生活のできるもの。
そして、今の住宅建築に比べるとコストがかかる建物というのが現実。
それにはきちんとした理由があり、むやみやたらに「高い」と言うわけではありません。
今の建築はオートメーションが進み、私たちが知りうる「大工の手間」というものが見えなくなってしまっているからだと思います。
私の小さい頃は今よりずっと、鉋(かんな)や金槌を持って仕事する大工さんが多くかったような気がします。
また、茶室建築ももしかすると「自動化」できるものなのかもしれませんが、父は一貫して手仕事。
言う言葉では片付けられない技術や長年の「勘」のような机上の計算式や理屈ではないものがあるようです。
また、材木や土、紙など茶室を作るのに必要なもののほとんどが日本に昔からある伝統技術を必要とするもの。
材料もない、仕事も少ない、後継者継もいない、と「ないない」のループでひとつひとつの価格が高騰しているのも事実。
ここまでくると茶室は「贅沢」の極みですね。
茶室を作ること、スタッフの皆はどう思うのかな・・・喜んでくれるのかな・・・
そんな思いもまた、私の中でループしていました。
しかし、そんな思いは取り越し苦労。
スタッフからは色んな疑問や質問が投げかけられてきました。
「お茶室ってどのくらいの期間で出来るの?」
「どうやって作るの?」
「何人で作業するの?」
「どこで作るの?」
「いつ出来るの?」
そして一番多く出てきた言葉は
「楽しみ!!」
なんとも嬉しい言葉!
準備も整い、後はみんなの期待にも応えるべく父に頑張ってもらうだけと言うことになりました。
《つづく》
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それでは、また明日。
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「夢のマイホーム」なんて言葉もありますが、茶室もある種の「夢」なのではないかと思います。
祖父や父に依頼をされる方のほとんどは憧れやこだわりを持った依頼主がほとんどです。
茶室は「自分の城」のような感覚に違いありません。
ですので設計段階で並々ならぬこだわりを父にぶつけてこられることが多く、あまりの熱意をぶつけてこられる時には、依頼主を説得することも父の仕事のようになることもあるほどです。
ですが、若林からのリクエストはとてもシンプルなものでした。
「細かいことはお任せしますんで、よろしくお願いします。」
「お任せする」ほど責任重大な言葉はありません。
以前にも依頼主の方に「お任せする」と言われて、しばらく頭を抱えていた父の姿がよみがえりました。
さて、SOU・SOUには衣類、生活用品、お菓子などありとあらゆる商品があります。
かつてはお風呂までありました。
もちろんその全てにSOU・SOUのテキスタイルが使用されており、テキスタイルは「SOU・SOUらしさ」の象徴でもあります。
そして、今や茶室のデザインは自由。
ガラス張りや円形、組み立て式、「マリメッコ茶室」なんてテキスタイルが主役のポップで可愛い茶室もあったほど。
そんなことで、父は父なりに「SOU・SOUの茶室」に対するイメージを膨らませていたようです。
私は自宅では仕事のことやSOU・SOUのことはほとんど話ませんので、父の中の「SOU・SOU」は日々の娘の私を通して見る「SOU・SOU」。
父の想像力を最大にしたところで行き着いたのは
SOU・SOU=数字の柄。
とても素直であながち的外れでもない想像。
そこで父は若林の意図する「お任せ」をより具現化させようと雑談を重ねます。
父「障子とか壁とか数字の柄にしますか?」
父は若林が面白い茶室にしたがるに違いない!と言う想像を膨らまし「障子が数字なのは想定内!」なんて思っていたのかもしれません。
(私も思っていました・・・)
しかし、予想に反して返ってきた言葉は
若「いや、普通でいいです。」
父「普通でいいんですか?数字にすることもできますよ!」
若「いや、茶室に数字(SO–SU–U)はいりません。」
父も私も正直、拍子抜けしてしまったのはココだけの話。
私たちの予想に反して若林の求めている茶室はとてもスタンダードなもの。
あっけなくいつも通りの茶室でいいと言うことになりました。
《つづく》
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それでは、また明日。
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SOU・SOUのお茶室構想から完成まで、実は約2年間の歳月がかかっています。
父と兄の2人で細々と仕事をしているため、大きな工務店のように複数の現場を掛け持ちして行うことが出来ず、常に目の前の現場に全力投球!
とても効率は悪いのですが、自分の目の行き届かない仕事はしないと言う根っからの職人らしい父の考え方です。
それにより、結果的にSOU・SOUの茶室工事を約2年もの間待たせることになってしまいました。
しかし工事が始まるまでの間、全くの手付かずだったかと言うとそうとも限りません。
茶室は木造建築ですので、多くの木材を使用します。
材料でもある材木とは、父曰く「出会い」だそうです。
ほとんどの場合、材木は材木商に行ってすぐに思うようなものが手に入るわけではあるせん。
ですので、求めている材木があると聞けば、日本全国を駆け回って集めることは日常茶飯事。
これを逃したらもう出会えないかもしれない!と思うような材木があれば、なんとかお金を工面して購入することもあります。
よく出入りする材木商であれば倉庫の中の在庫まで把握し「どこそこの倉庫の奥の棚の後ろにある材」と、店主も忘れているような材をピンポイントで注文することも。
また、茶室で使用する木材は少し特殊で「銘木(めいぼく)」と言われるものです。
「銘木(めいぼく)」とは、美しい木目や形の木材のことで主に専門業者が取り扱う希少なもの。
ピカピカに磨かれた丸太は気高ささえ感じます。
木材は、適材適所に使用されてこそ価値の生まれる不思議なものです。
ですので父は常に木材アンテナを張リ巡らせて使用する材料の選定を行っています。
SOU・SOUの茶室は小さい建物でしたが、規模の大きい建物になると、自ら山に入り材木を切り出したり、貯木場(木材港)、原木の競り場へ出向いたりもします。
そして伐採した原木は一年ほど雨ざらしにしてアクを抜き、その後、製材(板や角材にする加工)して再び自然乾燥させる工程を経て使用されます。
少し話は脱線いたしましたが、SOU・SOU茶室ができるまでの約2年の間にも材木屋さんへ行くたびに材木を求めたり探したりしていました。
材木選びも茶室造りの要となるのです。
《つづく》
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それでは、また明日。
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【今日の合言葉】
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SOU・SOUの茶室は4畳半あるかないか。
とてもコンパクトな空間です。
その茶室のスペースとは別で必要なのが「水屋(みずや)」
水屋はお茶室のお勝手のような役割を持っています。
お客様から直接は見えないものの、スムーズにお点前ができるように道具を準備して整える大切なスペース。
今の時代は水屋がなくてもキッチンのような場所があれば、水屋は必要ないのでは?と思うところです。
様々な事情でキッチンなどで代用されることはあると思いますが、父は断固として水屋を置くことを薦めました。
備え付けとして造るスペースがなければ、「置き水屋」と言う方法もあります。
その名の通り、箪笥のような形で移動することのできる水屋。
必要な道具を置いておくこともでき、水瓶から水をすくって濯いだ水はタンスの引き出しの中に溜まるシステム。
父が水屋を薦める一番大きな理由は、SOU・SOU茶室がお茶のお稽古の場になると言うこと。
水屋での立ち居振る舞いも大切なお稽古。
そして茶道では「大切に道具を扱う」ことがとても重要な心持になります。
キッチンではシンクの位置が高い上、万が一、大事な道具が金属の蛇口などに当たってしまっては一大事。
大切に道具を扱うことも大切なお稽古の一環なのです。
最終的にSOU・SOU茶室の水屋は小さいながらも茶室の外にスペースを確保することができました。
現代は物がありふれているので、ついつい効率を先に考えてしまいましたが、昔は茶道具は「宝物」だったに違いありません。
そう考えると水屋の存在や扱いは当然の成り行きとなるわけですね。
あることが当然だと思っていましたが、新しい「なるほど」と思う発見でした。
《つづく》
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それでは、また明日。
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「SOU・SOU茶室」ができるまでのエピソードを毎回ご紹介しておりますが、今回は番外編。
本日で放送300回を迎えられる、ナガオカケンメイさんがパーソナリティを務めるαステーション「LONG LIFE DESING RADIO」にSOU・SOUプロデューサーの若林がゲストとして登場いたします。
盆暮れ正月に登場するゲストとして若林が度々出演させていただいている「LONG LIFE DESING RADIO」。
いつもはスタジオですが、今回はパーソナリティのナガオカケンメイさんをSOU・SOUの茶室にお招きして出張ラジオ収録。
せっかくなので、お茶を一服召し上がっていただきながらSOU・SOUが考えるお茶のアレコレをお話しさせていただきました。
記念すべき放送300回!ということで、和菓子になったテキスタイルデザインディレクター橋本が用意したお菓子はこちら。
亀屋良長謹製
SOU・SOUのテキスタイル「半纏(はんてん)」
黒い部分はチョコレート羊羹、裾の白い部分は甘酒羊羹で屋号が透けて見える部分は佐々木酒造「聚楽第」を使用した日本酒羹。
懐紙の代わりに敷いているのは「半纏」のテキスタイルをもとに今回のためだけにデザインしたオリジナルの絵葉書です。
僭越ながらお茶は私、寺田が点てさせていただきました。
ケンメイさんも最近お茶のお稽古を始められたとのことでしたが、気軽にSOU・SOU茶室を愉しんでいただこうと堅苦しいことは無しです。
オリジナルのお菓子もそうですが、お客様をお招きするのにお茶やお菓子、道具やお花を考えるのも楽しく、準備するのも新鮮な発見でした!
「お茶を点てながら話す」という、思っても見なかった経験に終わってから「もっと、あー言えばよかったなー!」と欲が膨らみましたが、終始和やかな雰囲気だったのはケンメイさんのお人柄のような気がします。
貴重な経験、そして文字通り「一期一会」の瞬間を感じることができて、今まで以上にお茶の奥深さを感じました。
さて、最後にインフォメーションにはSOU・SOU傾衣店長 川勝が登場いたします。
こちらも是非ご注目くださいませ。
本日18時より放送!
よろしければ是非、ご聴取くださいませ。
聞き逃した方、ご遠方の方はコチラをご確認くださいませ。
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それでは、また明日。
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店舗でお会計時に、以下に掲載している「今日の合言葉」を
言って頂くと、1ポイント差し上げます。(1日に1ポイントのみの進呈です)
毎日変わりますので、ご注意ください。
尚、これは店舗のみのサービスとさせて頂きます。
あしからず御了承願います。
今日の合言葉は 「ロングライフデザインラジオ」
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祖父や父が手がけた茶室は個人宅が多く、プライベートな場所となっているのでもちろん非公開。
美術館は外から観ることはできても実際に触ったり空間に入ることができないことがほとんど。
日本の文化なのに私たちが本格的な茶室に足を踏み入れようとした場合、ごく限られたシーンでしかその空間を味わうことができないのです。
マイホームを建てる時、多くの人はモデルルームやショールームに足を運びイメージを膨らませると思いますが茶室はそれができない。
茶室だってきっと一生に一度の大きなお買い物のはずなのに、なんだかな・・・私はそんな風に思っていました。
若林がそのことに対してどう思っていたかはわかりませんが、せっかくなので我が家以外の茶室にも見てみよう!と揃って出かけたのは京都、大徳寺にある塔頭・瑞峯院(ずいほういん)。
お寺の中にある「平成待庵(へいせいたいあん)」という茶室はご縁あって30年ほど前に祖父が建てさせていただいた茶室です。
「待庵(たいあん)」というのは京都の妙喜庵(みょうきあん)というお寺に実際にある茶室で、千利休が造ったとされる最古の茶室建築と言われています。
つまり待庵は今の茶室の原型で、その「待庵」を模したものが「平成待庵」です。
いつも笑顔で迎えてくださる瑞峯院のご住職は父の顔を見るなり
「あんたの方が詳しいから好きなだけ見て行きなさい」
と奥へ通してくださりました。
祖父は平成待庵を建てるのにあたり、発見された文献などをもとに待庵が建てられた当時の寸法を忠実に再現したとのこと。
また、真っ黒い壁は経年劣化によって変色した待庵の壁を再現するために土壁の材に煤や炭をまぜて敢えて黒くしたものです。
自宅の茶室とは趣が違い驚きましたが、狭さを全く感じないのは茶室の凄さだと思います。
待庵が茶室の「原型」と言われても素人目には「完成型」にしか思えないのですが、実際その空間に身を置くと、そこに利休や秀吉がいて、ここは縁の深い大徳寺・・・と想像の羽を広げずにはいられません。
同行した私はちょっとしたロマンを感じながらワクワクしていました。
《つづく》
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それでは、また明日。
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今日の合言葉は 「茶室彼是(ちゃしつあれこれ)」
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「SOU・SOUの茶室をつくりたい」
若林からそう打ち明けられ、私は想像しただけでワクワクしていました。
若林と父とは面識がなかったので顔合わせの場を設けるべく、若林が我が家へやって来ることになりました。
なにかと来客が多い我が家ですが、娘の務め先の社長が来るとなると話は別で、朝から両親は揃ってソワソワ。
そして従業員の実家に訪問するのは初めてという若林の緊張感も感じ、父と若林の間に挟まった私はさらに緊張・・・
ただの緊張した大人たちの集まりのような状況が若林と父の初対面の瞬間でした。
百聞は一見にしかずということで、まず若林を案内したのは自宅の茶室。
父が茶室の解説をしつつ、実際に座った景色を味わってもらいました。
狭い茶室、今で言うところの「密」な空間は初対面の緊張感を自然と解くような不思議な空間でもあります。
一通り案内したのちに、改めて若林から父に茶室を造って欲しいと依頼がありました。
そもそもなぜ、SOU・SOUに茶室が必要なのか?
SOU・SOUのスタッフは入社したら全員がお茶のお稽古に通います。
ほとんどのスタッフが日本文化に興味があって入社して来るのですが、茶道はほぼ全員が初心者です。
SOU・SOUは「新しい日本文化の創造」を謳っていますが、日本文化を知らないことには創り出すことができません。
基本を知ってこその新しさ、そしてその楽しさをより多くの方に伝えることが私たちの仕事であれば幸せだと考えています。
また、若林自身が長年、茶道のお稽古を通じて感じたことを私たちスタッフにも感じて欲しいと考えているのかも知れません。
全員がお稽古に通うことを推奨してるとは言え、各々の事情で通いたくても通えないスタッフもいるのが現実。
そこで会社に茶室があったら通いやすい、しかも知り合いの先生に依頼して「楽しく習う」ことを目的にすればいいのではないか。
そんな若林の考えのもと「SOU・SOU茶室」は始動しました。
もちろん父はその仕事を快く引き受け、その思いに応えるべく動き出すこととなったのです。
若林が帰った後、父から「いい会社に入って良かったな、あなたはとても恵まれているよ。」と言われました。
私も改めて、スタッフのために若林が真剣に考えていたことなのだと理解し、誇らしく胸が熱くなったことが今でも忘れられません。
《つづく》
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祖父、両親、兄夫婦が全員揃って建築の仕事に携わっています。
家族全員いわゆる理系。
家族の中で私だけがお勉強も苦手、絵を描くのも苦手。芸術的センスもありません。
なぜなんだ?本当はよその子なのかも・・・
小さい頃から大人になってからも、そのことがずっとコンプレックスでした。
そのせいもあってか、それまで見知らぬ誰かに家業のことを話すことなどあまりありませんでしたが、SOU・SOUの面接の時にはじめて社長の若林に家業が数奇屋(すきや)建築を生業にしていることを話しました。
コンプレックスだと思いながらも、否が応でも見たり感じたりしてきた私の「リアルな茶室のあれこれ話」に黙って耳を傾けていた若林。
気がつけば面接のはずが、話の中心は伝統産業や茶室のことになっており、
「最近は美術館や店舗内に建てたりすることが多く、個人で新たにお茶室を作る人は随分と少ないようです。」
と、そんな世間話に近いような会話の中で若林がポロっとこんなことを言いました。
「いつか茶室、欲しいねんなー」
お茶を嗜む人ならばいつかは自分の茶室を・・・
と考えるのはごく自然のことかもしれません。
入社後も
「いつか茶室が・・・」
なんて言葉を耳にすることがありましたが、欲しいと思ってすぐに手に入るものでもないので、冗談半分で特段気に留めることもありませんでした。
▲新人紹介の一日一駄話にも・・・
〜時は流れて2018年の初秋〜
「明日、夜ごはん行くか?」
若林に誘われて連れて行ってもらったのは、とあるお寿司屋さん。
食事も終盤になったところで、突然切り出されました。
「ところで茶室を作ろうかと思うねんけど、キミのお父さんに頼めるかー」
「あ、いいですよ!」
っと、とっさに返事をしたものの、内心は「え?」と頭の中が「?」だらけ。
本気なのだろうか・・・いやいや、冗談を言うためにお寿司は食べさせてもらえないはず。
と言うか返事してしまったしお寿司も食べてしまったし、もう断れない。
心中は全力でザワザワしながら残りの鉄火巻きを口に運びました。
そうなんです。
これが『SOU・SOUのお茶室』が始動した瞬間の出来事です。
《つづく》
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それでは、また明日。
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今週も右左どころか360度なにも知らなかった私が初めて招待されたお茶事のお話にお付き合いくださいませ。
《その1》《その2》
食事が終わると、より狭い茶室へと誘われました。
中は薄暗く蝋燭の明かりが灯され、神妙な雰囲気の中でお茶のお点前が始まります。
ピンと張り詰めた空気の中にシュンシュンと湯の沸く音、そして手際よく流れるようなお点前。
分からないなりにも自然と亭主の手元に視線が集中し、不思議なことに足が痺れることありませんでした。
後で知ったことですが、茶事のクライマックスはこの時の「濃茶(こいちゃ)」だということです。
濃茶は普段の馴染みのあるお抹茶(薄茶)ではなくドロッとするほどに濃いお茶。
混じり気のないお茶の緑に香り高く練られたお茶はその場にいるお客で一碗を回し飲みます。
知らないとなかなか衝撃的なお作法ですね。
そして、飲み終わるとお茶碗やお茶を点てる際に使われた道具を拝見します。
「何代目なんちゃら斎の・・・なんちゃら斎好みの・・・」
趣向を凝らしたお道具にお恥ずかしいことですが、無知過ぎてなんの話かさっぱりわかりませんでした。
ただ、とても大切なものだということは手の中で伝わってきます。
知識よりも本物に触れる経験をより強く感じた出来事でした。
一連の濃茶が終わると、続いて薄茶となります。
ここではお抹茶をとてもリラックスした雰囲気でいただきました。
気がつけば全てが終わるまで4時間以上の出来事でした。
▲その時の様子が雑誌の記事で残りました。今見ても「緊張感」の一言に尽きます。
無知を承知で本物の経験をさせていただけたことは、未だにとても思い出深い経験です。
現在はお茶のお稽古にも行っていますが、お茶のなんたるかなど到底わかるはずもありません。
お客様に一服のお茶を差し出す、とてもシンプルなことですがいつかその本質が分かる日が来るのか来ないのか・・・
ただ、この時のお茶事がとても楽しかった!嬉しかった!という経験がお稽古を始めるにあたってのハードルを下げたことには違いありません。
【おわり】
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今週も右左どころか360度なにも知らなかった私が初めて招待されたお茶事のお話にお付き合いくださいませ。
《前回の続き》
緊張のあまり1週間前から具合を悪くしながら当日を迎えました。
一体なにを着るべきなのか、持ち物は何か?
自分ではなにも決めることができず、全てを母に尋ねながら支度をしました。
着物は「紋」の付いたもの。
立春を過ぎた頃なので春らしい色にお祝いの席なので派手すぎない華やかなもの。
と、着物にも格があり身だしなみは招待してくださった方への敬意、そしてご一緒する方への配慮が必要なのだということを初めて知りました。
▲扇子に懐紙、新しい白足袋(洋服の時は白い靴下)ビニール袋も忍ばせておくと便利
幸い全く知らない場所、連客も全く知らない人ではなかったのが救いです。
まず到着したら、新しい足袋に履き替えて身支度を整えます。
客が揃ったところで、半東(はんとう)と呼ばれる補佐役の方の案内で、蹲(つくばい)で手を清めたのち、
躙口(にじりぐち)という小さな入り口から茶室に入ります。
しばらくして襖が開き、亭主(ていしゅ)つまり招待してくださった方が挨拶に声をかけます。
いきなりお茶が出てくるのかと思いきや、
まずは炭のお点前が始まります。
炭の色、小さくパチパチとなる音、微かに香る炭と香の匂い。
見るもの全てが初めて。
そしてじっくりと見ているととても美しい景色なのです。
よし、この後お茶が出てくるのね!
っと思ったら
「時分時でございますので粗飯を差し上げたく・・・」
とお声がけがあり、あれよあれよとお膳が並んでお酒が注がれます。
お茶ではなくてお酒!?と驚きながらも次々綺麗な器に盛り付けされたご馳走が続き、お茶のことなどスッカリ忘れて目の前のご馳走に夢中。
着物じゃなきゃもっと味わって食べれるのに〜なんて考える余裕まで。
お腹も心も満たされた気持ちで茶室を出るとすっかり陽は落ちていました。
時間の感覚がなくなっており、ふと我に返ります。
そうです、まだ肝心のお茶をいただいていない。
本番はこれからなのです。
《つづく》
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そして、京都駅には伊藤軒/SOU・SOUの特設売場が2/9(火)まで期間限定で出店されています!
こちらも、よろしければ是非お立ち寄りくださいませ!
それでは、また明日。
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先日、手紙の整理をしている時に出てきたものがこちら・・・
初めて「お茶事」に招かれた際の招待状です。
20歳の頃、父が手掛けていた茶室工事に興味を持ち、私があまりによく通うので施主の方の粋な計らいで「席披き(せきびらき)」の茶事にご招待してくださりました。
「席披き(せきびらき)」とは、完成したお茶室をお披露目する会です。
そんな大切な茶事に招かれた学生の私は喜びと緊張で招待の1週間前から具合が悪くなるほどでした。小さい頃から茶道の嗜みがあると思われがちですが、お茶のお稽古をはじめたのは30歳を過ぎてから。
20歳の私は右も左も分からないどころの話ではありません。
同行する父は「僕はお茶室は作りますけど、お茶をしないのが昔からのポリシーですから!」なんて開き直っており不安は募ります。
茶人でもある祖父を頼りに電話すると「おーおーそれは良かったなぁ、楽しんどいで」・・・欲しい答えは返ってきません。
お茶の嗜みのある母に救いを求めたところ、
「まず着いたら足袋を新しいものに履き替えなさい。そして常にお扇子を持っていること。後は横の人の真似をしておけば良いのよ。」
この3つのみ。
招待状に書かれていた「お茶を一服差し上げたいと・・・」は私にとってはただならぬ一服。
戦国時代に大名に茶室に招かれた家臣はこんな気持ちだったに違いないと思いました。
ちょっとした冒険に出かけるような私とお茶の世界との出会いでした。
《つづく》
寺田 由
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SOU・SOUのテキスタイルにもある「南天」を茶室に生けてみました。
南天に深呼吸したくなる甘い香りが早春を感じさせる水仙。
茶室に生ける花は「茶花(ちゃばな)」と言い、私たちが花屋さんで見かけるお花とは少し違います。
「花は野にあるように」
と言うのが千利休の教えだそうで、言葉どおりに野にあるかのように生ける(入れるとも言います)のがお約束。
四季を通じて茶花を見ていると、薔薇や百合のような華やかさはなくとも、可憐で凛としたお花がたくさんあります。
そして茶室の中で唯一「命」あるものがお花です。
同じ枝ぶり、花付きのものは2つとしてありません。
そう考えるとお花ひとつをとっても「一期一会」ですね。
茶人でもあった祖父は茶会の日の朝早くに花を摘みに行き、お客様がいらっしゃるギリギリまで花入れに向かっていたそうです。
他のお道具の準備は前日までに済ませておけますが、生きているお花はそうはいきません。
ありのまま、シンプルと言うことは同時に誤魔化しが効かないと言うことでもあります。
私もお花の正解がわかりません。
「正解はない」が正しいのかもしれませんが・・・
ありのままって奥が深い。
寺田 由
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